食欲がないのでほぼ食べずにいたら……。
入院4日目、術後2日目の朝。
この日も爽やかなアナウンスとBGMを浴びながら6時に起床し、看護師さんに検温、血圧測定などをしていただきました。ちなみに前日に点滴は取れているので、点滴スタンドとはおさらばしています。快適に歩行できる喜びを噛み締めながら、朝食前に洗顔と化粧を済ませます。
入院するまでは、入院中化粧はしないだろうなと思っていました。当然手術当日は必要ありませんし、もしかしたら術後も検査の妨げになるかもしれないと思っていたからです。
けれども実際私は、手術当日以外はしました。入院中はパジャマで過ごしているので、どうしてもダラダラ気分になってしまうのが難点。個人的に化粧をすると気分もやる気も盛り上がるので、化粧品には随分助けられました。
8時に朝ご飯です。この日の朝は、ミルクコッペパン、チョコクリーム、とろとろスクランブルエッグ、ポテトサラダ、プチトマト、牛乳です。
こちらがチョコクリームです。
いつもの私ならお腹ペコペコで朝食を迎えるはずですが……食欲ゼロ。ほとんど手をつけず、牛乳だけいただきました。
「飯沢さん……昨日からほとんど食事に手をつけていませんね。食欲ないですか?」
気づけば朝食のトレーを下げにきてくださった看護師さんが、渋い顔をしていました。
「はい……あまり食欲がなくて……」
「そうですか……。そういえば術後、便は出ましたか?」
「はい……少しだけ……」
「ここまで食欲がないと心配です。医師に相談してみますね」
「え?!」
「担当医は本日休みなので、別の医師が来ます。お部屋で待っていてください」
どうしよう……。
まずい……いやまずくはないけど……なんかまずい。
どうして食欲がないのか。
食欲がない理由は、お腹がパンパンに張っていることと、身体をあまり動かしていないことと、自宅ではなく病院だからだと思います。
しかしそれを説明した場合、もしかしたら食べないのはわがままだと捉えられてしまうのではないか、「無理してでも食べられるだろ」と思われているのではないか……と心配でした。食事をチェックされていると、段々食欲がないことを責められている気分になり、医師の来訪が憂鬱になりました。
もちろん看護師さんにそういった意図がないのはわかっていますし、食事チェックも看護師さんのお仕事だと理解しています。
困ったなあと思いながら、医師の来訪を待ちました。
退院が危うい!
「飯沢さん、調子はどうですか?看護師からあまり食欲がないと聞いていますが」
ベッドに横になった私のお腹に聴診器をあてながら、医師がそう言ってきました。
「腸は動いていますし、傷口も問題なさそうです。しかし食欲は……」
「はい、食欲がないです。お腹が張って苦しいのが原因かはわかりませんが、お腹が空かないです」
「うーん。困りましたね」
「あ、でも、大丈……」
「明日もこの状態なら、レントゲンを撮りましょう」
「え」
「明後日が退院予定日でしたね。場合によっては、退院延期になるかもしれません」
……そんなのやだ!
早く病院とおさらばしたいのに、まさかの退院延期?!
困ったことになってしまいました。
頑張って食べる昼食。
失意の中で迎えた昼食です。お米180グラム、焼き魚野菜あんかけ、冷奴、ぬた、のり、キュウイ。
相変わらず食欲はありませんし、食べたくないですが、そういうわけにもいかない。なんとかして、食べた形跡と食べる意志を見せなければなりません。
全部は食べられませんでしたが、持参したふりかけで白米を半分食べました。
無理して食べる夕食。
気が重い中での夕食です。お米180グラム、鶏肉の変わり揚げ、ごまだれ大根サラダ、煮物、お味噌汁、パイン。
今回も持参したふりかけで、白米を少し食べました。
看護師さんは相変わらず渋い顔をして、トレーを下げてくださいました。
もっと食べなきゃ……だめ???
夕食後はどんよりした気持ちでシャワーをし、就寝しました。